この時期、定期健康診断の受診を控えている企業様も多いのではないでしょうか。定期健康診断を受けた後の結果について、積極的にセルフチェックはできていますか? ご自身の健康状態の把握のためにも、健康診断のタイミングでチェックを推奨してみましょう。前年度の結果と比較し、変化を定点観察することが望ましいです。
それぞれの項目で異常値が出た場合、何が問題となるのでしょうか。
原因と対策も記載いたしましたので、セルフチェック後の生活習慣の参考にしてみてください!
AST、ALT、γ-GTPをチェック。50を超えると肝臓の破壊が進んでいるサインです!
【AST】高値だと肝炎・脂肪肝等の肝疾患の可能性あり
【ALT】ASTと同様。
【γ-GTP】高値で肝臓・胆道の病気がある可能性あり
原因:アルコール過剰摂取、脂質超過
→飲酒を控える、過食を控える、脂っこい食事を控える
eGFRは腎臓の性能を%で表したものとみることができます。
【尿素窒素】たんぱく質の老廃物。高いと腎機能の低下が疑われる。
【クレアチニン】尿素窒素と同様
【eGFR】腎臓でろ過できる血液量の推定。若い時の数値は100。10以下は透析が必要。
【尿酸】高値は痛風の可能性。アルコール多飲、肥満(過食)でも上昇。
原因:たんぱく質や塩分の過剰摂取、過度の飲酒
→たんぱく質や塩分の過剰摂取を控える、飲酒を控える、水分を十分に摂り体内の水分を循環させる
高血糖が続くと、動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こす原因になります。
【血糖】110-125mg/dlは糖尿病予備軍の可能性あり。126mg/dl以上は糖尿病の可能性が非常に高い。併せてHbA1cが6.5%以上の場合は要注意。
【HbA1c】採血前1~2か月の平均血糖とされる。血糖と併せて糖尿病の有無、程度がわかる。
原因:食事習慣、過食、糖質の過剰摂取、肥満、運動不足、過度なストレス、加齢
→糖質を控えた健康的な食事、食べる順番(野菜から)に気を付けたり低GI食品の活用により、血糖値の上昇をゆるやかにする
悪玉コレステロール値をチェック。これを減らすことが最も重要。善玉コレステロールは運動によって増加可能。動脈硬化を起こすリスクが高い、高血圧・糖尿病・喫煙習慣などがある場合は薬を用いて調整することも。
【HDLコレステロール】善玉コレステロール。低いと動脈硬化を起こしやすくなる。
【LDLコレステロール】悪玉コレステロール。血管壁に溜まり、動脈硬化を引き起こす。
【中性脂肪】主に皮下脂肪として蓄積されます。
原因:運動不足、食生活の乱れ、肥満、ストレス
→飽和脂肪酸・トランス脂肪酸を含む食品を控える、アルコールを控える、適度な運動
なんらかの病気が原因である可能性もありますので、受診をお勧めします。
【WBC】高値は肺炎などの炎症性疾患や血液疾患等の可能性がある。
【RBC】低値で貧血や肝疾患の疑い。投薬によっても減少。高値は多血症の可能性。
【Hb】胃潰瘍などの消化管疾患や婦人科疾患が貧血の原因になることも。
【PLT(血小板)】低値は肝疾患や紫斑病、白血病などの血液疾患の可能性あり。
原因:鉄欠乏性貧血や腎臓肝臓の機能不全、がん、白血病、ウイルス感染等、様々な原因が考えられます。
→結果に異常があった場合は速やかに医療機関を受診してください。貧血予防としては、鉄分の摂取が有効。
先述の腎機能や血糖と関連付けて観察してみましょう。
【尿蛋白】腎炎・ネフローゼ症候群など腎臓障害や尿路以上の可能性あり。
【尿糖】血糖値がある一定を超えると+になる。糖尿病診断の第一歩。
原因:腎臓障害、ストレス、疲労、睡眠不足、水分不足、風邪
→前頁2、3の項目をご覧ください。その他、水分摂取、十分な睡眠も重要。
食事や運動不足が引き起こす生活習慣病について、少しは知っていただけましたでしょうか。もし結果に「要再検査」「要精密検査」「要治療」があった場合は、速やかにお近くの医療機関を受診しましょう。
生活習慣病はその名の通り、生活習慣から引き起こされるリスクが高い病気です。裏を返せば、生活習慣の改善によっていくらか予防・軽減ができる病気とも言えます。食事は脂っこい食事と過度な飲酒はなるべく控え、食物繊維を積極的に摂取しましょう。食物繊維を多く含む食事は、脂質の吸収を抑え、スムーズに体外に排出する手助けをしてくれます。
また、食事と併せて重要なのが、適度な運動です。朝にウォーキングを取り入れてみたり、通勤時には2駅分歩くなど、生活に取り入れやすいものから始めてみましょう。
星野 優(医療法人社団 結樹会 理事長)
東京慈恵会医科大学医学部卒業。大学附属病院や関連病院にて消化器・肝臓領域を主としながら内科全般に幅広く対応した後、医療法人社団 結樹会の理事長に就任。関東を中心に「働く人の健康」を追求。同時に日本医師会認定産業医として、東証一部上場企業やスタートアップなど延べ数十社の産業医業務に従事し、内科及び産業医としての視点で企業のヘルスケアやメンタルヘルス対策、健康経営優良企業(ホワイト500)取得のサポートなどを実施。