最近、日本のオフィス環境において、エアコンの温度や空調の問題が存在しています。体感温度には個人差があり、これがオフィス内での温度設定に影響を与えています。今回はこの問題と解決策について、日本医師会認定産業の星野医師に聞いてみました。
日本のオフィスでは、一般的に男性が多い業種において、エアコンや空調の温度設定が男性寄りにされる傾向があります。男性は女性よりも代謝率が高く、体温が女性よりもやや高いことが多いとされています。また、外回りや移動が多い営業職は体感温度が高くなったり、逆にデスクワーク中心の職種は体感温度が低くなったりすることもあります。この差異がオフィス環境問題の原因となり、以下のような問題が生じています。
エアコンの温度が低過ぎると、集中力の低下や作業効率の低下、健康問題のリスクが生じる可能性があります。「冷え性」という言葉をよく耳にしますが、一般的に女性の割合が多いとされ、寒さを我慢していると肩こりや腰痛・頭痛・だるさなどの症状が現れるだけでなく、月経痛や月経不順の要因となりうるともいわれております。また、主に東洋医学的な観点から、冷え性には全身・下半身・手足・内蔵などいくつかの種類があり、特に内蔵型の冷え性は消化不良による下痢や便秘を引き起こす原因にもなりかねず、決して軽視してはいけません。
温度設定の違いが原因で、職場内において、職種間や男女で衝突や不和が生じることがあります。エアコンの温度について環境省は、夏季室温は28℃、冬季室温は20℃にすることを推奨しています。しかし、温度の感じ方には個人差があり、各人がエアコンの設定温度を下げすぎたり上げすぎたりすることで、職場の雰囲気や協調性に悪影響を与える可能性があります。
オフィスエアコン温度問題を解決するためには、以下の解決策を考慮することが重要です。
問題の根本的な解決には、オフィスメンバーのコミュニケーションが欠かせません。温度に関する不満などを共有し、理解を深めることで解決策を見つけることができます。オフィスの温度設定は、季節や天候の変化に合わせて定期的に調整する必要があるため、従業員からのフィードバックを積極的に収集し、温度に関する問題や不満を把握することが重要です。定期的なモニタリングとフィードバックを繰り返す体制構築も解決策の1つといえるでしょう。
オフィス内の個々の作業スペースにおいて、オフィス内のエリアごとに温度ゾーンを設定するなど温度調整の柔軟性を提供することが重要です。個々の従業員が自身の快適な温度に調整できるよう、個別のエアコンや温度調節装置を導入することが考えられます。また卓上扇風機などの冷暖房機器を利用することも選択肢として挙げられます。また、風の当たり方によっても変わるため、フリーアドレス化や席替えなども柔軟に行うことで社員の方の「忍耐」「我慢」を改善できる可能性があります。
さらに温度の問題を解決するためには、オフィスでの服装をより柔軟に設定することも大切です。「クールビズ」という言葉があるように、ジャケットやカーディガンで温度調節をしたり、ひざ掛けの使用を許可したりするなど、適切な季節や気候に応じて、服装の選択肢を広げることで、温度の問題を和らげることができます。
暑さ寒さの感じ方は、一人ひとり異なり、昔から職場や学校内でのトラブルの源といわれております。また、暑すぎる、寒すぎる環境は身体的、メンタル的に非常に負荷となりやすく、様々な体調不良を引き起こしかねません。クールビズ、ウォームビズのように、基本的には職場の空調は一定にした上で、個々人が衣類などで調整することが公平性という観点からも望ましいと考えます。
特に夏場の「寒すぎる」環境は、肩こりや頭痛の要因となりうるため、直接風の当たらない席への異動や衣類の調整を積極的に行う必要があります。体調不良時は自己判断せず、医療機関へご相談することをお勧めします。
オフィス環境は、従業員の生産性や幸福感に直接影響を与えます。エアコン温度問題を解決することで、従業員の働きやすさを向上させることができます。また、多様性を尊重し、全ての従業員が快適に働ける環境を創り上げることも重要です。問題解決には時間と努力が必要ですが、オフィス内の温度問題を解消するためには、組織全体の意識改革と継続的な取り組みが求められます。従業員の声に耳を傾け、適切な対策を講じることで、より健康で生産性の高いオフィス環境を実現することができるでしょう。